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ゲリラ豪雨

     
2011年10月3日

●ゲリラ豪雨とは

集中豪雨の中でも降雨の範囲が非常に狭く、降雨時間が短いにもかかわらず単位時間あたりの降雨量が非常に多い局地的豪雨のことを、ゲリラ豪雨と呼びます。「ゲリラ」はもともと軍事用語ですが、「無許可で少人数かつ短時間で行うこと」という意味があることから、限られた地域において短時間に多量の雨が降るゲリラ豪雨を、ゲリラ豪雨と呼ぶようになりました。
気象学ではゲリラ豪雨に関する明確な定義はありませんが、一般的に直径10キロメートルから数10キロメートルの範囲内で、1時間に50ミリを超える雨の量を目安にこう呼ばれています。
雨や台風などは天気図によってある程度予測が可能ですが、ゲリラ豪雨は現在の予報技術では正確に予測することは困難です。そのため過去にはゲリラ豪雨への対策が遅れ、大きな被害につながったこともあります。
ゲリラ豪雨は地形によっては土砂流、崖崩れなどを起こし、河川では増水や氾濫などを招きます。特に近年は都市化の進行によって、ゲリラ豪雨の被害は家屋の浸水や道路の冠水にまで及び、住民の生活に直接関わる被害を出しています。
ゲリラ豪雨の発生するメカニズムは、まだ十分解明されてはいません。しかし近年さまざまな研究により、少しずつ解明されつつあります。
ゲリラ豪雨を発生させているのは積乱雲です。前線の停滞、台風の接近や上陸など、大気の不安定をもたらすさまざまな原因によって発達した積乱雲が積み重なることによって局地的な大雨をもたらしているのです。積乱雲とは夏場の空にみられる縦方向に大きく盛り上がった雲のことを言います。入道雲とか雷雲、かなとこ雲と呼ばれることもあります。夏場になると地上付近と上空の温度差によって大気が不安定になります。そこでその不安定を解消しようとして生まれる上昇気流によって積乱雲が発生します。そして前線や集風線、大気の状態によってもさらに積乱雲は発達します。
よってゲリラ豪雨が梅雨期や台風の接近時などに多く発生するというのは、大気が不安定になることが原因なのです。
積乱雲の雲底は地上付近から2キロ程度ととても低く、雲頂は最高で1万メートル以上に達すると言われるほど高いのが特徴です。積乱雲はさまざまな雲の種類の中でも最も巨大な雲です。
この巨大な雲である積乱雲の上層部分は氷の結晶から形成され、それより下層部分は水滴で形成されています。この水滴が地上に落ちると、地上に雨が降ることになります。
積乱雲は夏場に発生しやすい雲です。なぜかというと夏場は地上付近が高温多湿になるためです。積乱雲は高温多湿になった空気がさまざまな影響を受けながら上昇気流で押し上げられることで発生し、さらに鉛直方向へ発達していきます。そして下流気流が起きて大雨を降らせながら積乱雲は衰退していきます。このような積乱雲が次々と発生し、一か所に雨をもたらすとゲリラ豪雨となるのです。夏場の天気予報では「大気の状態が不安定」という表現を耳にすることが多くなるでしょう。これは上昇気流が生じやすい状態のことを指しています。夏場の空に黒く、縦に積み重なった大きな積乱雲が現れたら、ゲリラ豪雨に注意をしたほうがよいでしょう。

このようなゲリラ豪雨発生の原因の一つには地球温暖化の影響が考えられています。地球の平均温度が少し上がることによって、地球の環境が大きく変わろうとしているのです。地球温暖化とは大気中に二酸化炭素などの温室効果ガスが増えることによって、地球の平均気温が上昇し過ぎることをいいます。
この地球温暖化は18世紀の中頃、産業の発展とともに大量の石油や石炭を消費するようになったことから始まったと言われています。石油、石炭の大量消費は膨大な二酸化炭素を排出し、19世紀になると家庭における電化製品の普及や森林の減少がさらに追い打ちをかけたのです。こういったことから大気中の二酸化炭素の量は急増し、温暖化が急激に進みました。その結果この100年で地球の平均気温は約0.6度、日本の平均気温は約1度も上昇したと言われています。
ゲリラ豪雨以外にも干ばつ、黄砂、台風の巨大化や竜巻、ハリケーンなどの異常気象が近年世界中で多発しています。干ばつとは雨が異常に少ないことが原因で、長期的な水不足に陥ることをいいます。干ばつによる日照りが続けば水不足になり、農業や家庭での生活水が十分に得られなくなります。干ばつによる被害は広範囲に、そして少しずつ現れます。まず干ばつによって飲み水や生活水が得られなくなります。次に農業用水が確保できなくなり、農作物が生長できなくなります。農作物が育たなくなった地域では飢餓で苦しむ人々が続出し、社会不安や病気を引き起こします。
オーストラリアやアメリカでは数年にわたる大規模な干ばつが発生し、農作物に大きな被害を出しています。また食料の多くをオーストラリアからの輸入に依存している日本では、物価の上昇という影響を受けています。
日本では大規模な干ばつはほとんどありませんが、小規模な干ばつは各地で起こっています。このままのペースで大気中の二酸化炭素が増大すれば、ゲリラ豪雨や干ばつの多発だけではなく、同じ場所でゲリラ豪雨と干ばつが交互に起こり、隣接地域でゲリラ豪雨と干ばつが同時に起こるという極端な異常現象が発生するという予測もあります。
黄砂は東アジアの砂漠地域から強風により黄砂が舞い上がり、日本などの周辺諸国へ降下する現象です。黄砂は農業や生活環境に被害を与えるだけでなく、雲の発生、降水などを通じ、世界の気候にも影響を及ぼしています。
竜巻やハリケーンは発達した積乱雲の底から柱状にはやい速度で回転する空気の渦ができることを言います。地面や水面で発生し、都市部で発生すると被害も大きくなります。日本では年間平均12本程度の発生ですが、世界では年間平均数百本発生するという国もあります。 ゲリラ豪雨や干ばつなどの異常気象の増加は、大気中に二酸化炭素などの温室効果ガスが増加したことによる地球温暖化が原因である考えられるのです。地球は本来わずかな気温の変化でもバランスを崩し、環境や生命へ影響を及ぼすものです。近年における地球の気温上昇は、海水の熱膨張や氷河の融解など、地球の水資源へ大きな影響を及ぼしています。それが今日至る所で増加している干ばつやゲリラ豪雨だと考えられています。
ゲリラ豪雨と地球温暖化の関連メカニズムはまだはっきりと解明されていません。しかし地球温暖化が自然環境に大きな影響を与えていることに違いはなく、それによって人間の生命までも影響を受けることになるのです。さらにゲリラ豪雨を発生させている要因として、都市部におけるヒートアイランド現象との関連性が指摘されています。
ヒートアイランド現象とは特に夏場の都市部において、周辺地域よりも気温が高くなることを言います。その原因にはビルやマンションのコンクリート壁面からの放射、アスファルト地面からの放熱、自動車や建物のエアコンの放熱など、さまざまな原因が考えられます。さらに都市部には樹木が少ないため、一度上昇した気温は低下しにくい環境になっています。ヒートアイランド現象は19世紀頃には既に世界中の都市部で確認されていました。現在、東京では周辺地域と比較して年間平均気温が3度も高くなっていると言われています。また、熱帯夜日数はこの30年間で2倍以上に増加していると言われています。ヒートアイランド現象は単に気温を上昇させているだけでなく、自然界にもさまざまな影響を与えています。都市部で暖められた空気が上昇気流となり、海からの湿った空気を呼びます。そこへヒートアイランド現象による熱が積乱雲の発達を助長することで、ゲリラ豪雨が起こるというわけです。実際にゲリラは都市部で多く発生し、田舎や高地や高山ではあまり起こりません。ヒートアイランド現象の要因の一つであるアスファルトは、ゲリラ豪雨が起こっても雨水が地中へ浸透せず、家屋や道路の浸水の原因ともなります。このようにヒートアイランド現象は都市化が生んだ現代の深刻な環境問題と言えるのです。

●ゲリラ豪雨の被害

ゲリラ豪雨の発生は近年増加しており、各地で大きな災害を引き起こしています。河川が増水したり、氾濫したり、土砂崩れやがけ崩れが発生したりします。また人が住んでいる場所では家屋が浸水したり、道路が冠水したり、地下街、地下室に水が流れ込んだりします。1時間に30mm以上の雨が降ると、道路が川のようになってしまいます。
2000年9月には愛知県名古屋市周辺で東海豪雨が起こりました。このゲリラ豪雨では多数の犠牲者や家屋への被害が出ています。この地域では伊勢湾台風以来の大水害となり、都市型水害の恐ろしさを日本中に知らしめたゲリラ豪雨となりました。このゲリラ豪雨は秋雨前線と台風の影響で大気が不安定な状態になったことにより、東海地方を中心に豪雨をもたらしたものです。この時の降水量は名古屋市内の各観測所における観測史上最多を記録し、市内を流れる河川の水位を急激に上昇させました。
中でも名古屋市北部を流れる新川では、100メートルにわたり堤防が決壊し越流しました。他にも名古屋市内では河川越流が多数起こりました。
越流により新川や庄内川、天白川流域などを中心に浸水被害が激しく、住居内での溺死者が出たほどでした。浸水住居や事業所の多くは1階が水没し、家屋や家財道具、機材の多くが破損するなど、日常生活に直接関わる大きな被害を受けたのでした。
また名古屋市内を走る地下鉄への被害も大きく、天白区の野並駅ではコンコース、ホームともに浸水しました。多くの区間で運転が見合わされたことから、電車内やホームには足止めになって夜を明かす人で溢れました。また新幹線や在来線も運休が続出し、一時は足止めになった人々で混乱しました。
このように東海豪雨は住宅や事業所、交通網の密集する都市における水害であり、ライフラインが寸断される都市水害の恐ろしさを実感させるものとなりました。
この地域ではかつての伊勢湾台風以来の大水害として、住民の記憶に残るものとなっています。

2003年7月には九州地方でゲリラ豪雨が発生し数名の犠牲者を出した他、土砂災害などで多数のけが人を出しています。
2004年7月には「新潟、福島豪雨」、その5日後には「福井豪雨」が発生しました。その災害規模が大きかったことから、気象庁により正式に命名されています。いずれのゲリラ豪雨も少なからず犠牲者を出し、また家屋の倒壊も多く、復興費用や災害で発生したゴミ処理費用などで、自治体財政に大きな打撃を与えたと言われています。
翌年2005年9月には埼玉県から神奈川県にかけて台風の影響によるゲリラ豪雨が発生し、宮崎県でも多数の死者や浸水被害を出しました。この災害は「宮崎水害」と呼ばれています。
2006年7月には偏西風や台風の影響でゲリラ豪雨が起こり、南九州や北陸、長野、山陰地方など広い地域で被害を出しました。崖崩れや土砂崩れで多数の犠牲者を出しています。この災害は気象庁により「平成18年7月豪雨」と命名されています。
2006年8月には大阪府豊中市を中心にこの地域の観測史上最多のゲリラ豪雨が起こり、家屋の浸水、道路の冠水などの被害を出しています。
ゲリラ豪雨は世界的規模で発生しています。2006年7月には韓国でもゲリラ豪雨が発生し、大きな被害を受けました。この災害では土砂や落石により道路に大きな被害を受けています。短時間の豪雨で甚大な交通被害を出したことから、道路の手抜き工事が指摘された災害でもあります。同じ頃、北朝鮮もゲリラ豪雨による大きな被害を受けました。その被害は数百人が死亡、行方不明となり、農作物へも大きな被害が及んだと報道されています。同じ2006年にはインドネシアやジャワ島でもゲリラ豪雨が発生しています。被害は死者100人以上、さらに家屋や農作物へ大きな被害を出しています。インドネシアでは翌年にもゲリラ豪雨が発生し、大きな被害を出しています。2007年11月にはメキシコで記録的なゲリラ豪雨が15日間続き人々を驚かせました。全体の8割が浸水した州もあり、土砂崩れも発生したことから、100万人を超える被災者が出たということです。このゲリラ豪雨による経済被害も50憶ドルを超えると言われています。他にも世界を見渡せば至る所でゲリラ豪雨が発生し、少なからず被害を出しています。
2008年の第90回高校野球ではゲリラ豪雨による珍しい事態が起こりました。8月6日、この日は近畿地方を激しいゲリラ豪雨が襲い、広い範囲で浸水や冠水被害が相次いで発生していました。甲子園球場でも観客席の通路は雨水が滝のように流れ、ついに観客は避難することとなりました。
このゲリラ豪雨によって第2試合が2度中断し、83年ぶりの「豪雨引き分け」試合となったのでした。「豪雨引き分け」となった試合は後日仕切り直しの再戦が行われています。
その後に予定されていた第3試合も中止となり、それ以降の試合日程が一日ずつずれるという異例の事態となりました。
豪雨による試合中断は過去に何度もありますが、「豪雨引き分け再戦」というのは大正4年の第1回大会以来、83年ぶりの出来事だったということです。
2008年8月に都発注の下水道工事現場において下水道内で作業をしていた男性5人が、急な増水によって命を奪われました。作業員らはウェットスーツを着て約3メートルの深さのマンホールから下水道管内に入り、老朽化した下水道管内の内側を補強する作業を行っていました。作業開始時の水位は足元10センチ程度で、ひざまで増水したら作業を中断すると作業員の間では決めていたようです。しかし地上でゲリラ豪雨が降り、その後一瞬にして水深1,4メートルに増水し、作業員は次々と流されてしまったのです。
また神戸市の河川では、2008年7月に神戸市灘区の都賀川で水遊びをしていた子ども達が急激な増水によって流され、4人の命が奪われたという事故がおきました。この神戸市都賀川の事故は上流で発生したゲリラ豪雨が原因であったと言われています。河川の勾配や川幅などの悪条件が追い打ちをかけたのでした。川は上流からいろいろな場所を通って下流に至ります。流域のどこかでゲリラ豪雨が発生していれば下流は増水します。神戸市都賀川に事故はゲリラ豪雨の恐ろしさを改めて人々に知らしめました。

●ゲリラ豪雨の与える影響

・ライフライン
ゲリラ豪雨は、ライフラインの機能を著しく低下させ、時には寸断してしまいます。
ライフラインは都市化している社会の中で、日常生活を送るために必要なあらゆる設備のことをいいます。電気、ガス、水道、下水などの公共設備の他、電話やインターネット、交通機関などを含めてこう呼ぶこともあります。
昔のようにランプの灯りや井戸水を使用していた時代にはライフラインという概念はなく、災害によるダメージは現在ほど深刻ではなかったと言われています。しかし近代化した都市でライフラインはいわば生命線であり、たとえ体が無事であってもライフラインが寸断されたら生活ができない状態に陥ってしまうのです。
最近東京で発生したゲリラ豪雨では数千件の停電が発生しています。停電は住宅の灯り、冷蔵庫、テレビ、エアコン、パソコンなどを停止し、外部のあらゆる情報が得られない状態になります。またマンションなどのエレベーターが停電で止まると中に人が閉じ込められてしまいます。実際に東京のゲリラ豪雨でも、子どもが停電によって数十分マンションのエレベーターに閉じ込められる事態が発生しました。
電気や電話に比べて復旧に時間がかかるのが水道です。断水はゲリラ豪雨による河川の決壊や越流、また土砂崩れが原因となって水道管を破裂させてしまうことによって起こります。また停電によって送水ができなくなる断水もあります。特に水道管の破裂による断水は元に戻るまで時間を要することもあります。これまでもゲリラ豪雨による水害で断水状態となっています。特に土砂崩れや崖崩れの起こった地域では復旧が難しく、1週間以上も断水が続く場合もあります。
自然災害では必ずライフラインの被害も発生しています。ゲリラ豪雨が増加している現在、ライフラインへの被害を最小限に抑える都市の実現に向けて、各自治体は対策を投じています。

・企業
これまでもゲリラ豪雨によって多くの企業が多大な損害を受けてきました。東海豪雨では企業や官公庁でパソコンや機械が水没し、重要データの消失や多額の損害費用が発生する事態が起こっています。
ゲリラ豪雨による災害で被害を受けた中小企業は、場合によっては一時事業が中断し、そのまま廃業や倒産といった事態を招くこともあります。

・農業
お米や野菜、果物、花などを育てている農業は、自然現象に大きな影響を受けながら営まれています。雨が降らず日照りが続けば作物は枯れてしまい、台風が上陸すれば強い風で作物は倒れてしまいます。台風やゲリラ豪雨による大雨は農地の浸水や作物の水没を起こし、せっかく実った作物を台無しにしてしまうこともあります。さらに土砂崩れで農地自体がなくなってしまうこともあります。
2004年に起きた新潟のゲリラ豪雨の災害では、農業被害が73億円にも上ると報告されて話題になりました。その被害とは農地の浸水や、土砂の流入による被害が最も多く、次にトラクターなどの機械が破損する被害が多くなっています。
作物にとって雨はとても重要な存在ですが、多すぎても少なすぎても正常に育ちません。
ゲリラ豪雨は農家にとっても予測がつかない大変迷惑な雨ですが、このゲリラ豪雨によって世界の至る所で農業被害が続出しているのです。
近年では農業技術の進歩に伴い、災害に対する備えや復旧技術も進歩し、昔に比べると被害を少なく抑えることができるようになっています。
また、日本ではこのようなゲリラ豪雨による農業被害に対し、国による補助事業を行っています。この補助事業は実際に耕作している田んぼや畑、果樹園、さらに用水路やため池などが被害に遭った時、その復旧工事に一定額以上を要する場合に適用されるものです。
ゲリラ豪雨による農業被害は、野菜の品質や価格に直接影響します。そのため農業技術の進歩や国の補助制度で農業が守られていることによって、私たち国民は安定した食生活を送ることができるのです。

・学校
台風やゲリラ豪雨は学校に通う子ども達にとっても大変危険な気象です。特に近年被害が増加しているゲリラ豪雨に対しては、学校関係者や保護者の慎重な対応が求められます。
多くの小学校から中学校、高等学校では、地域による違いもありますが、暴風、大雨、洪水、大雪のいずれかの警報が午前7時の時点で発令されていれば、登校を見合わせて自宅待機をすることになります。そして午前9時までに警報が解除されればその時点で登校することになります。午前9時以降に警報が解除されても、その日は臨時休校ということになっています。子供たちが在校している間に警報が発令された時には、下校を早めたり学校待機にしたり、保護者が学校まで迎えに行くことになります。
ゲリラ豪雨は突然小さな河川や側溝の増水や通学路の冠水などを引き起こします。夏休み前後のゲリラ豪雨の多い季節には特に登下校時の気象情報に気をつけておくことが大切といえるでしょう。

・新幹線
新幹線はもともと自然災害に強い乗り物と言われています。それは運休率が新幹線は0.18%、在来線特急が0.54%、航空機が0.3%という数値からも明らかになっています。
新幹線は在来線と比べて厳しい災害強度に基づいて設計されています。ゲリラ豪雨や強風などの悪天候時でも、徐行するなどの措置によって運転を継続することができるのです。
そのように安定的な輸送手段である新幹線ですが、過去に起きた阪神大震災や東海豪雨では、運休するという事態に陥っています。特に東海豪雨では豪雨を軽く考えた新幹線側が次々とダイヤ通りに新幹線を発車させたため、結果的に70本近い新幹線が駅間で止まったままになり全面不通となったのでした。乗客はその間、正確な情報もないまま不快な車内で一夜を過ごすこととなったのです。
ゲリラ豪雨の発生しやすい夏場は、夏休みやお盆の帰省などで新幹線利用者が増加する季節です。また近年のガソリン価格の高騰により、自動車に代わり新幹線を移動手段とする人も増えています。
高速で快適であることに加え、災害時や非常事態時にも安全に私たちを運ぶ輸送機関として新幹線は重要な手段です。

・都市
都市部における市街化はゲリラ豪雨による被害をより深刻なものにしています。
最近増加しているゲリラ豪雨は、街の下水道の排水能力を大きく上回る雨量をもたらします。
市街地の排水設備は一般的に1時間50ミリ前後の雨量を想定していますが、これを超える雨量の場合には排水路などに溢れることになります。田舎のように土や田んぼの地面なら雨水を吸収してくれますが、アスファルトやコンクリートで舗装された地面では雨水が地中へ浸透していきません。これによってますます雨水が道路や街に溢れることになるのです。
また近年では地下鉄、地下街、地下駐車場などのように、地下空間を利用した施設が増加しています。雨水は当然低い方へ流れていくため、ゲリラ豪雨の発生時には地上で溢れた雨水が地下へ一気に流れこみます。実際にゲリラ豪雨によって、地下駐車場の自動車冠水や、死亡事故も起きています。
さらに現代は都市部を中心に電車や地下鉄などの交通機関や、電気、ガス、電話などのライフラインに頼りきった生活をしています。ゲリラ豪雨はこういったライフラインに被害を及ぼし、都市機能を完全に麻痺させてしまいます。
ゲリラ豪雨は今後も増えていくと考えられますが、それだけに都市部では早急に対策を進めることが求められています。

・道路
ゲリラ豪雨による災害では、自動車にまで被害が及ぶことがあります。2000年の東海豪雨や2004年の福井豪雨では、道路の冠水により多くの自動車が水に浸かりました。
河川の決壊や越流が起こると道路や住宅に水が流れます。田んぼや土の多い地域では雨水は地表から浸透していきますが、市街化した地域の地面はアスファルトで舗装されているため雨水が地表から浸透しません。その結果道路は雨水で溢れ、浸水被害が大きくなるのです。また最近ではマンションの地下駐車場も増え、地下に雨水が流れ込んで自動車に被害が及ぶ事態も起こっています。
これまでの大きなゲリラ豪雨でも、あまりの雨量の多さから道路に車を置き去りにして避難した人が多くいました。ゲリラ豪雨が去った後には乗り捨てられた自動車が至る所に見受けられました。
浸水した自動車の多くはその後廃車になります。廃車にならなくても内装や電装系統が水につかれば匂いやシミが残ってしまいます。そのため買い替え時には中古車引き取り業者でも値がつかないのが実情です。
東海豪雨や福井豪雨の直後には部品や内装の交換によって、多くの自動車は修理費用が新車購入費用を超えるという状態になりました。膨大な修理車や廃車の台数は一時処置が危ぶまれたほどです。しかしその一方で廃車の中にも再利用できる部品が多くあり、中古車業者や解体業者が押し寄せたということです。
今日、自動車は私たちの生活に欠かせない交通手段です。それだけに近年増加しているゲリラ豪雨に対して、自動車保険の加入や緊急時の対策を日常から備えておく必要があるでしょう。

・川遊び
最近ではゲリラ豪雨による急な川の増水によって、川遊びをしていた子どもが命を奪われるという事故が起きています。川に出かける場合には天気や周辺環境を十分に確認し、ライフジャケットを着用するなどの備えが必要です。
空が暗くなってきたときにはすぐに川から離れ、気象情報や河川水位情報を確認するようにします。外出時でも携帯電話やカーテレビ、カーラジオ、防災無線などを活用し、最新の情報を入手するようにしましょう。
ゲリラ豪雨による被害を最小限に抑えるためには、ゲリラ豪雨に関わる情報ができるだけ早く人々に伝わることが重要だと考えられます。

●ゲリラ豪雨の自治体による対策

ゲリラ豪雨は河川を急激に増水させ、河川の破堤や越流を引き起こします。河川の越流によって家屋の浸水や道路の冠水などの被害が増大します。そのため自治体による対策では河川の拡幅や浚渫などが重要な課題となっています。
また短時間に雨水が河川へ流入しないためには、雨水を一時的に貯留するための調整池が大きな役割を果たします。そのため各自治体では調整池の整備を進めるとともに、新たな宅地開発の際には調整池の設置を開発者に求めています。
さらに都市化の進行によって地下鉄やビルの地下空間などが増えています。地下空間はゲリラ豪雨の発生時には恐ろしい空間となります。実際にビルの地階への浸水により犠牲者が出たことは記憶に新しいでしょう。
このような事態を防ぐため、自治体によって地下空間への浸水防止対策が進められています。同時に地下空間からの避難体制を整備し、ゲリラ豪雨の発生時には迅速に避難できるような態勢作りも重視されています。
ゲリラ豪雨による被害では土砂災害によるものも多く発生しています。土砂災害の危険のある区域では自治体による防止工事とともに、避難体制の整備が図られています。また、危険区域での開発行為の制限や、移転勧告なども行われています。
ゲリラ豪雨による被害はそれぞれの地域の地理の特性によって異なります。そのため自治体がそれぞれ過去の自然災害から学び、その地域に必要な対策を投じることが求められます。
国や自治体による水害対策が進んでいる一方、住民の危険意識は低下していると言われます。しかし現実は水害を引き起こすゲリラ豪雨の発生は年々増加し、毎年のように各地で大きな被害を出しています。
ゲリラ豪雨による被害を少なくするためには自治体の対策に頼るだけではなく、住民が自ら生活を守ろうという姿勢が大切です。
例えば日常から雨水桝をきれいに保つこともゲリラ豪雨対策の一つになります。雨水枡とは道路の雨水を排水するために、道路脇にもうけられている桝のことを言います。ここに落ち葉やゴミが詰まり、物が置かれていると雨水が排水されず、敷地や道路が冠水する原因になります。
また家族が別行動をしている昼間のゲリラ豪雨に備え、避難場所を確認しておくことも大切です。東海豪雨の時は携帯電話がつながりにくい状態になったという例から、携帯電話に頼りすぎないことが重要です。
日常から地域で配布されているハザードマップを活用し、ゲリラ豪雨に対する準備や心構えをしておくことが緊急時に役立つでしょう。
日本の多くの自治体では、ゲリラ豪雨対策として調整池の整備に力を入れています。
調整池とはゲリラ豪雨によって発生する大量の雨水や出水を一時的に貯める池のことです。森林開発や宅地開発などが進むと、森林や田んぼ、畑などが減少します。それに代わりアスファルトやコンクリートで地面が覆われ、雨水が地中へ浸透できなくなります。特に大都市では地面のほとんどがアスファルトで覆われているため、ゲリラ豪雨による大量の雨水は行き場を失うことになります。その結果道路に水が溢れ、さらには住宅の床下浸水や床上浸水にまで至ってしまうのです。
そこで一時的に水を貯留し、下流へ少しずつ流すための調整池が必要となります。既に日本各地に調整池は整備されていますが、近年ゲリラ豪雨が増加していることから、さらに多くの調整池の整備が求められています。またゲリラ豪雨の雨量や災害の規模から、これまでの調整池の能力では対応できない可能性がでており、さらに能力の高い調整池の整備が求められています。
調整池には主にダム式、地下式、堀込み式などの形態があります。堀込み式の調整池は住宅地などに多く、普段は調整池としては使用されていないことから、公園や駐車場として利用されていることもあります。
これまでは数年に一度の大雨の時にしか機能していなかった調整池は、普段は何もない窪地であるため、調整池の本来の目的が忘れられがちです。調整池の機能を住民が理解し、平常時から防災意識を持つように心がけたいものです。

また近年ではさまざまな対策グッズが販売されています。
その一つに止水板があります。ゲリラ豪雨による被害では浸水や冠水が起こります。これまでもゲリラ豪雨による浸水被害で、多くの人が住宅や家財道具に大きな損害を受けています。止水板は雨水の侵入する建物の入り口などに設置し浸水を防ぐもので、主に大きな施設や店舗で備えておくものです。現在ではさまざまなメーカーによって止水板が販売されていますが、それぞれ素材や形が異なっています。どんな場所にも適応し、簡単に設置できるプレート型のものなど、優れたものが多く販売されています。
また土のうも浸水を防ぐ対策グッズの一つです。自治体によっては台風やゲリラ豪雨の季節になると各家庭へ土のうの貸出を行っているところもあり、浸水対策グッズとして欠かせないものとなっています。土のうと言えばこれまでは土が詰められた袋が一般的でした。現在販売されているものの中には通常時は何も入っていない袋ですが、水に浸ると数分で膨らみ土のうになるという便利なものまで発売されています。軽くて保管場所を取らないこういった土のうは家庭において、ぜひ備えておきたいものです。
また地震や台風時の対策と同じように非常用グッズや携帯ラジオなどはライフラインの停止時や緊急避難が必要となった時に役に立つため、準備しておくとよいでしょう。

●ゲリラ豪雨予報

ゲリラ豪雨は予測が困難なものの、天気図によって発生しやすい大気状態かどうかを判断することは可能です。
ゲリラ豪雨が多くなる梅雨末期や台風の季節には、特に毎日の天気予報に気をつけることが大切です。ゲリラ豪雨は数時間前には兆しが見えてくるため、テレビやラジオ、インターネットなどで最新の状況を確認することによって被害を抑えることにつながります。そして住んでいる地域の地理の特性や、過去の自然災害をあらかじめ把握しておくことも重要なことです。
また気象庁では天気予報以外に防災情報を発信しています。しかしこれまで防災情報は有効に活用されていないというのが実態でした。そこで貴重な情報を有効に活用するために、今後は防災情報の利用促進が図られる見通しです。その一つにガイドラインの作成があり、できるだけ早い時期の実現が期待されています。
日本で明治17年に初めての天気予報が発表されて以来、天気予報は最も身近な情報番組として定着しています。
現在、天気予報の技術は飛躍的な進歩を遂げ、精度の高い予報が可能になっています。例えば降水予報なら、「明日予報」では85%程度、「明後日予報」では83%と高い的中率になっています。
しかし降水予報の中でも、竜巻や突風、ゲリラ豪雨に関する予報はまだ難しいのが実情です。
ゲリラ豪雨は梅雨や秋雨前線、台風など温かく湿った空気が流れ込むことによって発生しやすくなります。このような大気の状態は天気図によってある程度予測ができます。しかしゲリラ豪雨は積乱雲の中で起こる現象の結果であるため、何時頃どの地域で起こるかということを正確に予測することは難しいのです。
そのためゲリラ豪雨の予報は、数値予報を基に各地の気象台で雲の観測やレーダー、降雨状況などを併せて行われます。この予報を基にゲリラ豪雨や洪水に関する注意報、警報などが発表されることになります。
またレーダーやアメダス解析を基にコンピュータで計算し、1キロ四方ごとに6時間先まで1時間雨量を予想することが可能になっています。これは防災機関やテレビの実況予報として放送されています。
さらに2004年からは「降水ナウキャスト」によって、1キロメートル間隔で10分間隔、1時間先までの予測が発表されています。「降水ナウキャスト」とは、気象レーダーとアメダス降水量を組み合わせて、狭い範囲を対象に直近の降水量を予測するものです。一般の天気予報が「未来の予報」であるのに対し、降水ナウキャストは「ナウ」と表現されているだけに、直近の降水量を予報するというのが特徴です。
これに似たものに「降水短時間予報」があります。降水短時間予報は5キロメートル間隔の予報を30分間隔で発表しますが、降水ナウキャストは1キロメートル間隔の予測を10分間隔で1時間先まで発表するという点が異なっています。
このように降水ナウキャストは時間的、空間的にもきめ細かい予想が発表されているため「今から30分後の外出時の天気」や「洗たくものを取り入れるタイミング」など、行動に密着した降水情報が得られるのです。
この情報は携帯電話でも確認することができるため、夏場のレジャーなどの外出時にもこまめに確認することができるでしょう。
ゲリラ豪雨の予報技術まだ研究段階にあります。今後さらなる予報技術の進歩によって、ゲリラ豪雨対策の有効な情報源となることが期待されます。今後さらに気象庁による予測技術が進歩し、ゲリラ豪雨の災害防止に役立てられることが期待されています。

また、ある携帯コンテンツサービス会社では、ゲリラ豪雨に対処するための新しいサービスを始めました。新しいサービスではゲリラ豪雨の可能性がある場合に携帯電話のメールで情報が届くというものです。このサービスが有効に機能すれば、たとえ出掛ける前に天気予報を確認し忘れたとしても、ゲリラ豪雨メールが届いたら早めに帰途に就き、地下施設などの危険場所から移動するなど、行動を考えることができます。
このサービスで興味深いのはゲリラ豪雨の予測を一般人とともに行うということです。一般人である観測員が携帯電話を使用して、現在の天気や雲のある方角、雷鳴の有無などの情報と画像を併せて会社に送信します。それらの情報を基に、気象の専門家が数値データと合わせてゲリラ豪雨を予測するという試みです。
これまでにないこの試みは、成功すればゲリラ豪雨による被害を抑えると同時に、これまで難しいと言われていたゲリラ豪雨予報技術の進歩に役立つかもしれません。



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